残響散歌

これは私が勤めるスーパーで、商品の補充作業をしていた時の話だ。

 


お菓子の通路で商品補充をしていると、

ガシャン!と別の棚から何かが割れる大きな音がした。

お客様や従業員が商品を落として割ってしまうということがたまにある。

やれやれと思いながら私はその棚の方へ回った。

案の定そこには、床に散乱したドレッシングの瓶と、それを前に立ち尽くしているお客様の姿があった。

内心私は勘弁してくれよと思いながら、それを表情には出さないよう努めて、その女性に声をかけた。

 


「お客様、、、お怪我はございませんか?」

「…はい…取ろうと思ったら落としてしまって、、、本当にすみません。」

「お洋服など汚れたりしていませんか?」

「…はい。」

「あとは私が片付けておきますね。」

「…すみません……商品代金だけ払わせてください。」

「いえいえ、結構ですよ。たまにあることですので。お気になさらないでも大丈夫です。」

「…いえ、私の不注意で割ってしまったので、弁償します、、」

と言って財布を取り出そうとする。

「いえ、大丈夫ですよ。ここは片付けておきます。」

「…本当にすみません、、、」

そう言ってお客様は申し訳なさそうにその場を離れて、別の棚の方へ姿を消した。

 


時間取っちゃうなあと思いながら、バックヤードに清掃道具を取りにいき、売り場に戻ってきた時だった。

ガシャン!とまた大きな音が鳴った。

「嘘だろ?」と小さく口にして私はその音が鳴った方へ急いだ。

するとそこには、割れて床に散乱したジャムの瓶と、さっきとは別のお客様の姿が。

 


「え、、、、大丈夫ですか、、?」

「はい、、、手を滑らせてしまって、本当にすみません、、」

「いえ、、、良く、、、あることですので…ここは私が掃除をしておきま」

 


ガシャン!

 


今、このスーパーで、にわかには信じられないことが起きている。

 


私は目の前のジャムを割ったお客様に何か声をかけることもしないまま、その音の鳴った棚の方へ向かった。

今度はオリーブオイルの瓶が割れて床を濡らし、その前にはまた別のお客様が立ち尽くしている。。。

 

ガシャン!

 


ガシャン!

 


ガシャン!

 


今度は3方向から同時に音が起きる。

ワインの棚、ピクルスの棚、しゃけフレークの棚!!!

私はパニックに陥り、その場から動くことができない!!!

 


ガシャン!ガシャン!!!ガシャン!!!!!

 


ソースの棚!!!!!ジュースの棚!!!!!お酢の棚!!!!!!!

「やめてくれええええええええええええええええ!!!!」

頭を抱えてうずくまり、絶叫する私。

 


バリバリ!!!!!!!パーン!!!!!!!!!ビチャチャ!!!!!!!!!!

 


せんべいの棚!!!ポテチの棚!!!ケチャップの棚!!!!!!!!!「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!」

 


グニグニ!ネバネバ!プリプリ!

 


グミの棚!納豆の棚!えびの棚ああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!「俺があああああああああああああああ、俺がああ、何をしたあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 


私はそこで気を失い、数日後、病室で目を覚ました。

私はその日のことがショックで、しばらく出勤できなくなってしまった。

私の代理でやってきた店長が、私が店の金を着服していたことを見つけて会社に報告、私はそのままクビになり、それ以来もう二度とその店に近づくことはなかった。

 


あれは、なんだったのでしょうか……。